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 第34回 「インフルエンザ予防接種のすすめ」

 秋も大分深まって来ました。最近では町でガングロ、ヤマンバに遭遇する事もめっきり少なくなった様に思います。やはりあれは夏季限定の物で、お化け屋敷と共に消えていったのでしょうか?

 それにしても一向に衰える気配のないのがガンアツ(顔厚)オバンバです。まさにその頂点に立つのが我らが建設大臣、扇千景先生で、地球防衛軍のユニフォームも色あせる素晴らしい防災服を身にまとった勇姿、その向かうところ敵なし、天下御免のパワーを少し頂戴したいくらいです。あのサメのエキスよりは効きそうです。

 さて、毎冬猛威を奮うインフルエンザの季節が近づいて来ました。インフルエンザは、時に重症化し命に関わる事のある危険な伝染病です。たかが風邪だ!と侮ってはいけません。今回の主題は『インフルエンザ予防接種のおすすめ』です。

【Q:インフルエンザの予防接種は本当に効くのか?】

 昨年度の我が国のインフルエンザによる死亡者は報告されただけで1,287名、多くは肺炎など合併した高齢者でした。一方、子供の死亡も大きな問題となりました。217名報告された脳炎・脳症のうち82.5%が5才以下で、死亡は58名(致死率27%)でした。インフルエンザの症状が出てから、脳炎・脳症の発症までの期間は平均1.5日と非常に短く、アッという間に死に至る場合が希でない事が判明しています。インフルエンザの重症化や死亡症例は予防接種を受けた人々には明らかに少なく、中でも脳炎・脳症になった人々は全例予防接種を受けていませんでした。
 欧米では、我が国と比べインフルエンザの予防接種率は遥かに高く、その有効性は多くの報告が明らかにしています。

【Q:流行インフルエンザの型が予想と違えば予防接種は無効なのでは?】

 インフルエンザは、はしか等他のウイルス性疾患と違い予防接種液(ワクチン)を毎年新たに作り変えて接種しなければいけないという特徴を持っています。それは、インフルエンザウイルスの粒子の表面にいくつも突出しているとげ状の蛋白が変異し、抗原性が変化する為です。
 ワクチン株はWHO等世界と情報交換して決定され、最近では流行ウイルスとかなりの一致をみています。例え一致率が悪い場合でも交差免疫という現象によってかなりの予防効果を認めます。また、インフルエンザワクチンは元来Aソ連型・A香港型・B型の3種類の混合ワクチンであり、どの型が流行しても対応できるものです。但し、新型ウイルスは別格です!

【Q:新型ウイルスって何?】

 インフルエンザウイルスはヒトのみならず、カモ、ニワトリ、ブタ、クジラ、アザラシ等にも感染する為、人獣共通伝染病として地球上に広く分布しています。また、ウイルス内の遺伝子が分節になっている為、トリとヒト等、遺伝子が異なるウイルス同士が交じり合い再結合する現象が起こりえます。これが新型ウイルスです。人々には免疫が無い為、全世界に大流行が起こります。
 新型ウイルスは数10年に一度の割で出現しており、最も有名なものは1918年春のスペイン風邪です。かかった人6億、死者2千3百万、我が国では2千3百万人がかかり、39万人が死亡したと記録されています。新型ウイルス出現近しの声が高まる現在、国を上げてのさらなる対策が望まれます。

 最近では坑インフルエンザ薬が使える様になり、治療のみならず予防にもかなりの効果を上げています。2年前に承認された(当院ではその数年前から使用)A型ウイルスに対するアマンタジン、A・B両方に効くザナピルがあります。しかし、発症早期でないと効かない、耐性ウイルスを生じる可能性がある点からやはり予防接種をお奨めします。
 インフルエンザに負けない為には、もちろん手洗い・うがい・睡眠・栄養等抵抗力を高めておく事も大切です。

参考文献: 特集インフルエンザ 綜合臨床 49:221-315、2000

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