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 第46回 「地域健診」

 先日ラジオを聴いていて究極の酒のつまみの話を聞きました。
 高橋義隆という偉いドイツ文学者にして横綱審議会委員という粋な人の考案を嵐山光三郎氏が紹介していました。それによると米3粒を爪楊枝に刺して、ほんのちょっとの醤油に浸けて肴にするのが最高というのです。早速試してみましたが、いけること、いけること!色々とカレー粉、塩、味噌等、試してみましたが醤油が一番で、米一粒を味わいながらお猪口一杯のお酒をじっくり頂きました。過食にならず、酒もお猪口3杯で終了できて健康的だし、何よりも経済的で最高です。ぜひお試しください。

 今回の医療情報は、各区、市町村で地域で行われている成人健康診査についてお話します。市民検診、区民検診として行われている、我が国が諸外国に対しても誇りうる優れた生活習慣病の予防事業も、地方自治体の財政難でその存続が危うくなりそうな気配ですが、私達の新宿区では例年通りのメニュウで今年は何とか無事に終了しました。

 成人健診、ガン検診が今後も従来通り存続する為には私達医療側がキチンとデータを整理し、一部のガン検診無用論、健診有害説等、役所にとって財政削減の上で都合の良い健診事業縮小の理論的根拠に対抗する証拠を公に示す必要があると思います。

 又、地域の皆さんの健康のお手伝いをする我々開業医にとって、一年に一度しかお会いしない受診者も多いこの健診は、地域住民の健康状態を経年的に把握でき、発見された有病者に単に薬を処方する診療行為だけでなく、食事、運動等、生活改善を中心とした指導をする面でのかけがえのない貴重な資料となっています。

 私達のクリニックでは昨年320例の方が健診受診されました(今年は392例)。平均年齢は71.5歳で、男性105例(32.8%)に対し、女性は215例(67.2%)と2倍です。この理由は男性が既に企業健診等を受けている事もありますが、定年退職したご夫婦の受診者で「今日は嫌がる主人を無理やり引っ張って来ました」と言う方も少なくない事から、女性の方がより健診に熱心ではないかとの印象を持ちました。女性の平均寿命が長い事の一因?かもしれません。

 生活習慣病の中で、我が国成人の30〜40%の罹患頻度と言われる高血圧について見ると、WHOの高血圧分類で軽度以上の高血圧例が97例(30.3%)でした。これは同時期に行った平均年齢が44.6歳と比較的若い、ある企業健診の高血圧頻度の11.8%に比べ約3倍で、高齢化に伴って高血圧例が著しく増加している事が推察されます。

 その他の生活習慣病を見ると、高脂血症は高血圧のある無しに拘わらず57〜58%を占めて最も多く、私達の地域は都会人の過食、運動不足の典型的なパターンを示しています。我が国で700万人とも言われる糖尿病は私達の所でも増加傾向にあり、高血圧の人で26.8%、高血圧でない人では13.9%であり、高血圧と糖尿病の合併例が多い結果です。

 脳卒中等の脳血管障害の頻度は高血圧のない人の4%に対し、高血圧例では14.4%と高く、脳卒中の発生が血圧の上昇に従って増加しており、特に高齢者では著しいという国内外の報告を裏付ける結果でした。一方心筋梗塞、狭心症等の心疾患の発症は意外にもそれ程多くなく、高血圧の有無に拘わらず6〜8%で、生活が最も欧米化されたと思われる都心地域にも拘わらず、米国等から見ると極めて低い頻度です。

 以上の結果から私達の地域では運動不足、過食によると思われる高脂血症、糖尿病が多く、しかも増加傾向にあります。高血圧は3人に1人の頻度でほぼ全国並ですが、それぞれの疾患が重なると脳卒中の発生が多くなります。この予防の為には、私達地域の開業医が禁煙指導も含め栄養指導、適切な運動療法啓蒙等の地道な努力を率先して続ける事が重要であろうと思います。

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