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 第49回 「病気と細菌の関連」

 お正月と思っていたらあっという間に2月です。荒木一郎の歌(ちょっと古いかも)に「人生はつかの間のゲーム」というフレーズがありました。先日100歳のご老人が人生を振り返り、「あっという間じゃった」と言っていました。まさに光陰矢の如しです。
 ところでそろそろインフルエンザが流行って来ました。早くお迎えが来て欲しいと来院の度にこぼすB爺さんにとっては、絶好の機会がやって来たと言えるのでしょうか?
 そこで、次の様な詩を作ってみました

 老人風邪引き易く、咳治り難し。
 一寸の寒気軽んずべからず。
 未だ冷めず7度5分の熱
 改善の傾向いまだ認めず。
 往診の御用すでに招請。

 さて、今回の医学情報は色々な病気と意外な物の関連についてお話します。
 風邪が100種に及ぶビールス感染による事や、各種細菌やビールスによって肺炎、脳脊髄膜炎、腸炎、骨髄炎、皮膚化膿症などの様々な疾患が生じる事は、皆さんもよくご存知の事です。抗生物質の出現によって多くのこれらの感染症が克服されてきましたが、次々と耐性菌などが現れて、抗生物質と細菌の永遠の追っかけっこです。

 この細菌感染症ですが、従来関係無いと思われていた胃潰瘍や胃癌の原因が、ヘリコバクタピロリ菌と言う菌によって引き起こされる事が分かってきました。この事から菌を殺す事が治療に結びつく事が分かり、スタンダードな治療として、PPIと言う胃の薬と共に2種類の抗生物質が投与されています。また最近の研究では、動脈硬化によって生じる心筋梗塞の原因の中で、急性冠動脈症候群と言われる血管の内膜の不安定な状態から血栓が生じて、冠動脈が閉塞してしまう病態も感染症が関与している事が分かってきました。

 クラミジアニュウモニエ菌(クラミジア性感染菌の一族)、胃潰瘍でもご活躍のヘリコバクタピロリ菌、サイトメガロビールスの他、口腔内で歯周病などの歯科領域の感染を起こす菌が関係していると言われています。高脂血症、糖尿病、高血圧、喫煙などが従来知られていた心筋梗塞の主な危険因子ですが、細菌感染が一役かっていたとは驚きです。

 私の数少ない経験ですが、心筋梗塞を起こした人に若くして総入れ歯の人や歯槽膿漏の人が多かった印象を持っています。この様な人に心筋梗塞の予防として、また大量の抗生物質が使用される事になると、ただでさえ破綻しかけている医療経済の面で大変なマイナスです。生水を飲まず、暴飲暴食を避け、運動をして抵抗力をつけ、うがいをし、よく手を洗い、キチンと歯をみがき、身の回りを清潔に保つという昔の人の教えが、従来の危険因子を軽減させるだけでなく細菌感染を防ぎ、今日的な生活習慣病の予防にも役立つであろうと思います。

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