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 第73回 「BNP検査と拡張型心筋症」
 小沢さんが見込んだ人は学歴詐称の傾向があるのか、前回のコロンビアトップ事件(バックナンバー)に続き、久々ににぎやかなロス疑惑です。古賀議員は6年も大学生活を送りながら卒業していない様で、中条きよしばりのマスクで必殺遊び人の留学生活を送ったのでしょうか?デカパンを履いた山タク先生と三浦和義氏と共に、吉本興業からトリオ・ザ・ギワクとでも名付けてデビューは如何でしょうか。

 さて先日の外来である患者さんから尋ねられました。最近90歳の祖母が亡くなり、小さな人だったのですが焼き場で骨が大きすぎて骨壷に入らず、焼き場職員から「故人の骨は20歳若く、70歳前半です。」と言われたというのです。痴呆が進み、ほとんど寝たきり状態で、生前に一度骨密度(DEXA法)検査を受けた時は骨が弱くなっていると言われたのに、実際と違うのはどうしてか?検査はあまり当てにならないのか?と聞くのです。私は答えに困ってしまいました。確かに私も焼き場の職員が、病理教授が剖検所見を告げる雰囲気で骨をあれこれ見ながら「この方は腎臓病を患っておられた。」だの「肝臓病がどうのこうの。」と言うのを聞いた事があります。遺族は皆、御高説を賜りながら、なるほど等と涙を浮かべながら頷いたりしています。死ぬ時は大抵五臓六腑はやられていますから、適当な事を言っても何か当たる事があると思いますが、火葬場診断が正確かどうか研究をしてみたらどうでしょう。ただし私にはその気が全くありませんが・・・。

 この話の中で患者さんがもう一つ重要な指摘をしてくれました。それは20歳若い骨の真偽はともかく「骨ばっかり立派でも脳がだめならなんにもならん!」と言うことです。現在の医学は、心臓、消化器、脳神経、骨格筋などの疾患を個々に治療し、それぞれ効果が上がっているものもあります。しかしながら、これからの医学はヒトが高齢化しても全ての臓器がバランス良く機能し、肉体的、精神的に“元気”に最後を迎えるようにしなければならないと思います。

 ピンピンコロリ運動などを推進している地域があるようです。我が国では今まで経験した事のない超高齢化社会が迫っています。私はこれからの医学は抗加齢医療がキーワードになると考えています。日本人の三大死因の癌、心臓病、脳血管障害は加齢によって衰えた組織や器官を基盤にして発症すると言われています。全身臓器の加齢の状態を疾患に罹患する前に検査して把握し、予防できうる対策を講じる事が重要になると思います。運動療法も重要な手段の一つです。

 さて今月はホームページを見た方からのご質問にお答え致します。最初は血液検査による心臓由来のホルモンBNPが、170pg/mlを超えたTさんからのご質問です。うっ血性心不全で拡張型心筋症と診断されており、やや疲れやすいが特に息苦しいことはないとの事です。BNP値は18.7pgを正常上限としていますが、40pg位の値までは心機能が正常な人でもしばしば見受けられ、私はご指摘の20pgが相当高い値であると認識していません。一般的にはBNPが40〜100pgでは心臓病の存在を疑い、100pgを超えると心機能の低下(心不全)を考え、心臓超音波等の精密検査をします。しかしながらBNPは心臓以外でも上昇し、貧血、腎機能低下、高血圧症、高齢者、肝硬変の患者さんでも高値を示す場合があります。また心臓病でも心房細動という不整脈では、心機能がそれほど低下せず、自覚症状も無く、テニスなどをしても平気な人でBNPが100を超えている場合があります。

 さてTさんの場合ですが、拡張型心筋症がありBNPが170を超えた状態は、残念ながら心機能が低下しつつあると考えた方が良いと思います。疲れやすいという自覚症状も心不全の症状の一つである可能性があります。拡張型心筋症では運動時の動悸、息切れが初期の自覚症状ですが、次第に安静時にも息切れが生じてきます。危険な不整脈を動悸として自覚する場合もあります。心臓の拡張の程度や、不整脈の有無を胸部X線や心臓超音波検査、心電図で定期的にチェックしてもらい、補助的にBNP検査を受けると良いでしょう。
 すでにTさんもよくご存知と思いますが、拡張型心筋症は簡単な病気ではなく、心臓移植の適応となる場合も多いのですが、最近では内科的にも優れた治療薬が登場しています。主治医の先生とよくご相談になり症状に合った治療をお受けになると良いと思います。

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