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 第78回 「食中毒」

 子供の頃、手カガミで太陽を反射させて友達を驚かせる遊びが流行りました。「目が潰れるから危ない」という理由?で、早速先生のお小言を頂戴して禁止になりました。ところが最近、大人になっても手カガミを持って遊んでいる人がいて、警察に捕まってしまいました。「のぞき」のU先生です。ところで「のぞき」と言えば、明治41年3月2日の夜、西大久保の空き地で植木職人の池田亀太郎が「藤の湯」という銭湯の女湯をのぞいた帰りに、27歳の女性を襲った事件が有名です。亀太郎は冤罪を訴えたにもかかわらず、無期懲役になってしまいました。この亀は職人仲間から出っ歯の亀と呼ばれた特異な風貌のため、以後「のぞき」の代名詞として欧米代表のPeeping Tomと並び「出歯亀」として後世に名を残しています。

 最近では田代まさし先生が立派な業績を残していますが、いずれも人相がいかにも「のぞき」を専門にしている風なのに対し、今回のU先生はあまりにも整ったお顔立ちで、私の犯罪者人相概念を根底から覆すものでした。先生の経済の話はわかりやすく楽しみにしていたのに残念です。先生は、手カガミは覗きのための道具ではないと言い訳をしているそうですが、どうせやるなら天下国家を論じる学者なのだから、小さな手カガミなど使わず直径20〜30cmの大カガミで堂々と観察したほうが良かったのではと思っております。しかしながら覗いた相手が藤原紀香並みの美しい成熟した女性ならまだしも、女子高生とはあまりにも情けないトホホの話です。

 ところでU先生の義理のお父さんも言っていましたが、覗かれた女子高生にも問題はないのでしょうか?初めて来日した外国の友人が、通勤時に見かける短いスカートの女子が小学生と思っていたら、高校生と知って驚いていました。尻の見えそうなスカートを何故はいているのか?学校側は何の注意もしないのかと、軽蔑のまなこで質問されましたが答えられませんでした。「覗いてくれとばかりのスカートをはいている女子高生も悪い!渇!!」と言う事で性道徳を昔のまともな?状態に戻すべく、文部大臣の命令で終戦記念日には全国の女子高生にもんぺを履かせる事を提案いたします。だれも賛成しないだろうな。


 
さて今月の医療情報は食中毒です。この梅雨時には、細菌性食中毒が要注意です。食中毒の原因菌は、1)病原大腸菌、2)サルモネラ菌、3)腸炎ビブリオ菌が御三家ですが、その他ウェルシュ菌、カンピロバクターが知られています。2002年のわが国の食中毒は1850件あり、患者数が2万7,629人で18人が亡くなっています。内訳はサルモネラ465件、カンピロバクター447件、腸炎ビブリオ229件、病原性大腸菌96件、ブドウ球菌72件、ウェルシュ菌37件となっています。

 食中毒の主な症状は激しい下痢ですが、菌によって症状が多少異なります。腸炎ビブリオでは、中等度の発熱と激しい水様の下痢、上腹部痛が特徴です。サルモネラ菌では、38度以上の急激な高熱と粘液の混じる緑色の水様便です。病原大腸菌では、サルモネラ菌と似た急性胃腸炎症状であり、カンピロバクターでは、水様で腐敗臭のある下痢、腹痛、嘔吐、発熱、頭痛を伴い粘血便が続く事が特徴です。ウェルシュ菌では、二通りありA型は軽症で腹部膨満に始まり腹痛を来たしますが、発熱や嘔吐は稀で水様便も一過性で軽症です。一方C型は、壊死性腸炎を来たし重症です。複視、眼瞼下垂などの目の症状や悪心嘔吐、めまいの他、四肢の麻痺、嚥下困難などの神経症状を呈する場合は、死亡率の高いボツリヌス菌を疑います。血便の場合は、赤痢菌や腸管出血性大腸菌が考えられます。

 食べた物が生鮮魚介類では腸炎ビブリオ、加工食肉製品・水耕野菜では病原大腸菌、鶏肉ではカンピロバクター、鶏卵、肉類、ミドリ亀の飼育ではサルモネラ菌、大量の調理で食前に加熱されていない場合はウェルシュ菌、肉類の缶詰、瓶詰、真空パック製品、蜂蜜ではボツリヌス菌が疑われます。

 医療機関では菌を同定するために便の培養検査を行いますが、結果が出るのに時間がかかります。医者は患者さんが何時、どこで何を食べたかという事、同じ物を食べた人がどうか等を聞き取り、症状からどの菌による食中毒であるか推測し、治療を行います。激しい下痢を抑えようとして、つい下痢止めを使用しがちですが、下痢止めは腸の動きを止めて病原体の腸管内の停滞時間を長め、菌の毒素の吸収を助長するため禁忌とされています。患者さんの多くは下痢のため脱水症を起こしているので、スポーツ飲料などの水分補給が重要です。普通の腹痛や下痢でないと感じたら、いつもの正露丸などで様子を見るのではなく医療機関を受診して、点滴や抗生物質投与などの適切な治療が必要です。

 一般的に気をつけることは、冷蔵庫を過信しない事が重要です。冷蔵庫内でも食中毒の菌が増殖する事が分かっています。冷蔵庫内の温度を5℃に安定させる為には冷蔵庫の開閉頻度を極力減らし、一旦開けた時は速やかに閉めるよう注意すべきです。一般に冷蔵庫の戸を1分間開けたままにすると、庫内の温度が室内と同じになると言われています。卵はパックのまま冷蔵庫に入れ、肉は家庭用ラップでもう一度包んで保存し、冷凍食品は室温で解凍せずに冷蔵庫内で解凍するか、ただちに電子レンジで解凍調理すると良いでしょう。調理者は手洗いを励行し、まな板、包丁などの食器を清潔に保つ事は言うまでもありません。また、手にケガをしていたり体に化膿創のある人は、生ものを扱うのは避けるべきです。

参考文献: 細菌性腸管感染症の最近の動向と鑑別診断・治療:Medical Tribune 2004年6月10日

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