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 第84回 「メタボリック・シンドローム

 元旦の明け方、夢うつつの中、晦日の蕎麦のこなれが悪く、腹が張って目が覚めて一句。

 初屁の出、布団にこもりて顔を出す

 なんともしまらない年の初めですが、気合を入れて起床し、冷水で顔を洗い、玄関の雪をかぶったオリーブの木の脇に日章旗を立てて、我が家の正月の始まりです。
 例年の如くトランペット交響曲を聞きながら、老母と夫婦の三人で我が家の伝統の四方拝、お年取りの儀式を行い屠蘇で新年を祝いました。今年も大変な一年になりそうですが、健康を大事にし、前向きに誠実に生きていこうと決意を新たにしました。

 さて今年最初の医療情報は、メタボリック・シンドロームという耳慣れない話題です。心筋梗塞、脳卒中などは動脈硬化が原因の病気です。動脈硬化を引き起こす危険因子として肥満、高血圧、高血糖、高脂血症が上げられ、これらの3つが重なると動脈硬化による心臓病などの頻度が急激に増加します。この病態はかつてシンドロームXとか、死の四重奏とか呼ばれていましたが、最近ではメタボリック・シンドロームと呼ばれるようになりました。メタボリックとは代謝と言う意味です。コレステロール、中性脂肪などの脂質代謝の異常や、インスリンというホルモンが血液中に増える糖代謝異常などが絡み合って、動脈硬化が生じる病態です。

 動脈硬化性の病気は悪玉コレステロール(LDL-C)が高い重症な高脂血症だけでも生じますが、メタボリック・シンドロームでは個々の危険因子はそれほど重症ではない場合においても起こります。各危険因子が重なり合って、動脈の内膜に柔らかいプラークと呼ばれる動脈硬化を生じさせるのです。これはオカラのような柔らかいコレステロールの塊に、薄い膜が被さった状態です。流れの速い動脈の血流に曝され、酸化ストレス等が加わって内膜が不安定な状態となり、プラークが破れて血液の塊の血栓が形成され、最終的には血栓が血管を詰らせて心筋梗塞を生じます。

 さてメタボリック・シンドロームでは、多数の危険因子が偶然に重なり合って生じるのではありません。様々な危険因子の上流に共通の原因があり、栄養過剰や運動不足による肥満がその犯人である事が明らかになりました。この肥満は上半身肥満、男性型肥満とも呼ばれ、主として皮下脂肪の増加ではなく内臓脂肪の増加です。

 メタボリック・シンドロームは働き盛りの人に多く、心筋梗塞や脳梗塞の頻度も高く社会的にも大問題です。

 血圧、高脂血症、糖尿病の程度が個々にはそれほど重症でないので、患者も医療側も気を抜きがちですが、重なると要注意です。幸いな事に、原因となる内臓肥満は生活習慣の改善でかなり是正されます。タバコを止め、肥満を解消する積極的な運動療法、食事療法を心がけ、定期的に血圧、血液検査、体重、腹囲をチェックする事が重要です。

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