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 第93回 「禁煙のすすめ」

 先日、夕方の外来診療が終わるや東京駅へ駆けつけ、新幹線「こまち」に飛び乗り秋田へ行って来ました。仕事であれ何であれ、旅に出るのは何時もウレシィー私です。しかし、今回は一日だけの急ぎ旅です。学会の内容が予想以上に勉強になったこと、ホテルの朝食時に同席した愉快なおじさんが途中で人間ドック学会の会長だと判ったこと、昼食に入った郷土料理屋で思い切って注文した純米酒が格別おいしかったこと、新幹線の窓から眺めた日本の風景は奥が深く素晴らしいと感じたこと・・・。よい旅でした。

 この学会で聴いた「人間ドックにおける禁煙サポートの実際」という講演(演者は京都赤十字第一病院の繁田正子先生)が大変面白く、勉強になりました。今回は、『禁煙のすすめ』と題してお話しいたします。

タバコをやめる気なんて全く無いと思っているあなたも、そろそろタバコを卒業しようと思っているあなたも、やめたいと本気で考えているあなたも、まあタバコについて少し勉強してみましょう。

*タバコの煙の成分
 4千種類の化学成分が存在し、そのうち2百種類もの有害成分が確認されています。粒子成分とガス成分があり、前者は主にニコチンとタール、後者は一酸化炭素が重要です。ニコチンは血管を収縮し、心拍数・血圧を上げ、麻薬と同様中毒・依存症をもたらします。タールには多くの発ガン物質が含まれ、一酸化炭素はヘモグロビンと結びついて酸素の運搬能力を低下させ、運動能力低下・肌荒れ・老化促進などをもたらします。

*受動喫煙とは?
 本人が吸う煙(主流煙)より、先端からの煙(副流煙)のほうが高濃度に有害成分を含んでいます。それは、副流煙は不完全燃焼により生じる為と言われています。従って、自分のタバコより、他人が吸うタバコの方が有害とも言えます。

*タバコの害は肺がんだけではない!
 前回述べた、肺が壊れ換気できなくなる慢性閉塞性肺疾患のほか、喘息の発病や再発、症状の悪化の原因ともなります。肺がん発病率はタバコを吸わない人と比べ男性では5〜6倍、女性では2〜3倍となります。最近話題のアスベストによる肺がんの危険率は、喫煙者は非喫煙者の50数倍に昇るというデータがあります。また、喉頭がん・食道がん・膀胱がんなどとも関連が強いと言われています。

*タバコから胎児・赤ちゃん・こどもを守ろう!
 妊婦や家族の喫煙は胎児を酸素欠乏の状態にする為、胎児の発育不良・流産などをもたらす危険があります。また、乳児突然死症候群の大きな危険因子と言われています。さらに、その後の身体発育、知能発達を妨げ、問題行動を起こしやすいという報告もあります。喘息の発病や再発、悪化の原因になることは、よく知られた事実です。

*タバコは動脈硬化を促進する
 「人は血管から老いる」と言われ、動脈硬化は血管の老化の本態ともいえますから、タバコは老化を早めるとも言えます。エステに通うよりタバコを止めるほうが、効果的かもしれません。動脈硬化による病気で最も重要なのは、脳卒中と心筋梗塞です。これらの恐ろしい病気の危険因子として、タバコは疫学的研究により広く確認されています。

 タバコをやめたいけど、絶対できないと思っているあなた、どうぞ受診してください。止めるテクがあります。繁田先生いわくのあいうえおのコツを並べます。

 1. あかるくやめよう
 2. いっきにやめよう
 3. うごいてやめよう
 4. えんを結んでやめよう
 5. おきあがりこぼしでやめよう

【参考文献】
1) 卒煙ハンドブック
 京都禁煙推進研究会編 京都新聞出版センター 2003年5月
2) 小児科医が見たタバコ病
 井埜利博 最新医学新書 2004年12月

<ヒロオカクリニック 副院長 弘岡順子先生>

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