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 第92回 「COPD」

 毎週土曜の午後は患者さん達と、運動療法のため新宿御苑を小一時間ウォーキングします。今日は8月最後の土曜日、真夏の日差しと蝉時雨の中、秋風をフッと感じつつ汗だくになって歩くのはとても爽快でした。
 
 蝉時雨を聞くと、必ず思い出すのは、四国の田舎の家での夏休み、今は亡き祖母と風に吹かれて昼寝をした日々です。強烈な夏の日差しの中、庭の大きなクスノキの枝々を揺らす風の音と、東京では聞いたことがない見事な蝉時雨が耳に残っています。蝉の声に何か特別な感慨を持つのは、地上に出てからの蝉の命がとても短いからかもしれません。時間の物差しを変えれば、人の一生もとても短いと言えそうですが…。

 今回は、気が付いていない人が非常に多い、気が付かないと命にかかわる病気 COPD (慢性閉塞性肺疾患、シーオーピーディ)についてお話いたします。

*COPDって何?
 従来、慢性気管支炎あるいは肺気腫と言われていた疾患を一括した病名です。気管支の病変と肺の病変は、実際には混在しており一括してとらえるべきとの考えが世界的流れとなっています。慢性閉塞性肺疾患の英文の頭文字をとったものです。

*どんな症状?
 COPDの三大症状は、(1)咳 (2)痰 (3)息切れです。
 これらの症状が徐々に進行すること、持続性であること、息切れは階段の上がり下がりなどの運動時に目立つことが特徴です。2〜30年かかって徐々に増悪するため、重症になるまでご本人も気づかない場合が多いのが現状です。さらに、中年以降に症状が出るため「年のせいだ」と思い込んで受診しない方も多いようです。また、喘息との鑑別が時に難しい場合もありますが、喘息の症状は発作性に起こるのが特徴です。ただし、COPDと喘息が合併している場合もあると言われています。

*原因は?どんな病気なのか?
 有毒な粒子やガスを吸い続けることにより、気管支・肺胞(肺の中にある微細な丸い風船、毛細血管で覆われ、吸い込んだ空気から酸素を血管内に取り込む)に炎症を起こし、肺胞が破壊していきます。気管支粘膜の炎症により常に痰や咳が出る状態となります。肺胞が破壊されると、空気中から血液へ酸素を取りこめなくなり息切れが生じます。気づかずに放置すれば、常時酸素吸入をし続けなければ生きられない状態となり、やがて死に至ります。原因のほとんどが喫煙です!!
 喫煙指数(1日に吸った本数×吸った年数)の高い方は特に要注意です。

*高い有病率
 最近の我が国の疫学調査によると、COPDの患者数は530万人に昇ると推計されています。このうち9割は診断されていない潜在の患者さんで、高齢になるほど有病率は高くなります。40歳以上の人口の8.5%、70歳以上の17.4%と推計され、COPDは死亡原因の第10位に浮上しています。

*治 療
 破壊された細胞はもとに戻りませんが、進行を抑え、症状の軽減を図ります。
 第一に禁煙です。禁煙は、病気の進行を止める唯一の効果的な方法です。禁煙しない限り、病気は確実に進行します。
 第二に薬物治療です。症状を軽減する効果的な治療薬が数種類あり、重症度に応じて選択されます。
 第三に呼吸リハビリテーション、運動療法、栄養指導などがあります。
 また、インフルエンザや肺炎球菌の予防接種を受け、呼吸器感染症による急性増悪を予防することも重要です。

 タバコを吸っているあなた!COPDが少しでも疑われたら、すぐ受診してください。肺機能検査、胸のレントゲン写真などの検査を受け、一日でも早く診断し肺が壊れていくのをストップさせましょう。

<ヒロオカクリニック 副院長 弘岡順子先生>

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