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 第98回 「心不全」
 テレビの無い我が家では、出勤前にラジオを聞いています。素晴らしい演技を想像しながら聞く荒川選手の実況中継には胸躍りました。アナウンサーの「荒川選手、足を持って回っております。いつもより多く回っております。」と言う「前畑がんばれ!」を髣髴とさせる素晴らしい放送に耳を傾けつつも、何となくドビンを乗せて傘を廻していたご兄弟の顔が荒川選手の顔にダブってしまったのが残念です。ともかく「お目出度うございま〜す。」

 さて今月の医療情報は心不全です。

 心不全は心臓がなんらかの原因による心筋障害によって慢性的に機能が低下し、腎臓、肝臓、脳、皮膚などの末梢主要臓器の酸素需要に見合うだけの十分な血液を心臓が拍出できない状態です。肺や全身の静脈系にうっ血を来たしてむくみが生じ、生活機能に障害を来たした状態です。心不全は心臓のみならず、全身の機能不全とも言えます。

 心不全には急性と慢性があり、急性心不全は心筋梗塞や風邪のビールスが原因となる急性心筋炎、虫歯などが原因の感染性心内膜炎、突然生じた心臓の弁の異常、重症な不整脈や慢性に経過していた心臓病の急性増悪が原因となります。急性心不全の患者は救急、集中治療を行わないと急激に死の転帰をたどる事も多く、タイミングを失する事無く救急車を手配し専門病院での治療が必要になります。

 一方、慢性心不全の初期症状は労作時の息切れ動悸であり、次第に疲れやすい、だるい、むくみ等の症状が現れます。これらの症状は心臓病特有の症状ではありませんが、単なる疲れと思い、栄養ドリンク剤や市販の「心臓の薬」で間に合わせて放置すると、病状は確実に進行するので要注意です。体を動かしている時だけでなく、夜間寝ている時に喘息のような呼吸困難が生じ、起き上がると少し楽になる症状が現れると、心臓がかなりバテた状態で入院治療が必要です。

 慢性心不全の死因は重症度によりますが、50〜60%が心不全の増悪により亡くなり、40〜50%が突然死であり心室細動などの不整脈が原因となります。

 心不全は、New York Heart Association(NYHA)の機能分類で評価されます。これは自覚症状が無い沒xから、安静時にも症状がある「度に分類されており、それぞれの程度に応じた治療が選択されます。我が国では高齢化社会を迎え、65歳以上の心疾患の死亡率が増加傾向にあります。一般的に我が国の心不全は、欧米が虚血性心臓病によるものが多いのに比べ、遺伝的な要因もある原因不明の心筋症が多いとされていますが、高齢者では動脈硬化の為に心臓を養う冠状動脈が狭窄を起こして生じる虚血性心臓病による心不全が増加する傾向にあります。また、高血圧や加齢によってカルシウムが沈着したり組織が弱った弁の機能障害や、重症な不整脈の発現による心不全が多くなって来ます。高齢者ではこれらの基礎疾患から生じた心不全を自覚しない事も多く、感冒などの感染症や、水分塩分の摂取過剰、降圧剤の飲み忘れ等で、一気に心不全症状が現れ増悪するので注意を要します。

 それでは心不全を未然に診断して、進行を抑える手だてはあるのでしょうか?この答えは、今までこのコラムで何度か紹介してきた『BNP』と言う血液検査にあります。この検査は簡単な採血で済み、全く無症状の心不全も拾い上げる事ができる優れ物です。

 動悸、息切れを自覚している人は“救心”を服用する前に『BNP検査』をお勧めします。

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