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 第6回 「血圧Vol.2」

 前回は少し難しい血圧のメカニズムについてお話ししました。

 今回は具体的にどのように血圧を計ったら良いのか、そしてその結果をどのように評価したら良いのかといったことをお話し致します。

 最近では新聞・TVなどの健康に関する情報も豊富となり、一般の方々も血圧の自己管理の重要性を十分に認識され、自宅で自動血圧計による血圧測定を習慣にされている方が少なくなくなってきました。そこで私達の外来でも、血圧測定に関して様々な質問がなされます。一番多いのは「家の血圧計は計る度に値が違うので壊れているのではないか?」という質問です。続けて血圧を計ると、腕帯の圧迫により前腕がうっ血して、末梢血管の抵抗が高まり、血圧が高く出る場合と、何回も血管の圧迫を繰り返した後に、逆に末梢血管が反応性に拡張して、血圧が低く出る場合があります。測定値は毎回動揺するのが普通ですので、3回程度ゆっくり間をあけて測定し、平均したものをその時点の血圧とするように指導しています。

 また孫が「敬老の日」に買ってくれた指先で計る血圧計が、病院で計る値と全然違っているという訴えもしばしば耳にします。この種の機種は小さく持ち運びにも便利ですが、測定値が一般的に上腕で計るよりも低く、測定の位置、外界の温度など様々な要因で変化し変動幅も大きく、余り信用できない印象を持っています。そこで、出来るだけ上腕で測定する機種をお勧めしています。

 次に血圧はいつ計るのが良いかということもよく質問されます。ご承知の方も多いと思いますが、血圧は1日のうち、一定ではなく変動します。食事、排泄、通勤、運動、他人との口論、セックスなどの日常活動で血圧は変化しますが、一般に血圧は夜間睡眠時に最も低く、朝目が覚める頃からぐんぐん上がり始め、昼頃までにピークに達し、夜になると下がり始める周期的変化を示します。さらに1日の各時点で先に述べた様々な日常活動が加わり、血圧は上がったり下がったりします。この変動は、正常血圧の若い人、高血圧の患者さん、高齢者や糖尿病、腎機能障害を伴っている人で異なってきます。

 高齢者では動脈硬化が進み、末梢血管の交換神経刺激に対する反応性が増大し、病院の外来で医者や看護婦が測定すると普段よりも収縮期血圧が50mmHg近くも上がる、いわゆる白衣高血圧といった現象や、早朝に急激に血圧が上昇し、脳、心臓の血管事故が問題となっている早朝高血圧を示す人が多く、さらに動脈硬化の強い人では、夜間一般には交換神経系の抑制がとれ、血管が拡張して血圧が下がるべきところ、血管の壁が硬く、血管が弛緩せず血圧が下がらないばかりか、むしろ上昇する人もいます。

 私は疾患を有し、血圧の変動の激しい患者さんには24時間の携帯血圧計をつけてもらい、1日の血圧の変化を把握した上で、比較的安定している決まった時間帯に、自宅で測定し、記録を付けてもらうよう指導しています。一般的には、食事、飲酒、入浴の直後は避け、サラリーマンでは帰宅し、夕食後1時間程度たってから、家庭の主婦では、家族を送りだし、テレビのモーニングショウでも見終わった頃に計ることを勧めています。但し、松田聖子の結婚など刺激の強いニュースの後は辞めたほうが良いでしょう。

 このようにして測定した血圧をどのように評価したら良いのでしょうか。私達臨床家はWHOや国際高血圧学会の診断基準に従って、成人の正常血圧を<140/90mmHg未満>としています。この値は多くの疫学的データを元にして、血圧が高くなることにより生ずる臓器障害を未然に防ぐ安全域として定められたものです。しかしながら正常血圧の定義に関しては異なった考えもあります。

 話しが少し混乱するといけないので本稿では紹介に留めますが、世界的に影響力があり世界各国の臨床医に活用されている米国の合同委員会(JNC)のガイドラインが、昨年の11月に新しい第6次の高血圧の治療指針を発表しました。この中で新たに成人における興味深い血圧分類を行なっています。次回はこの点を少し解説したいと思います。

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