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 第8回 「血圧 Vol.4」

 血圧のお話しも4回目となりました。今回は高血圧の治療について、前回と同様にJNC-VIの発表をもとにお話ししたいと思います。高血圧の治療、予防に於いて最も重要であり、優先されなければならないのは、ライフスタイルの修正である事は従来より強調されてきました。ライフスタイルの修正として、以下の7項目が挙げられています。

  1. 肥満者は減量する。
  2. 節酒、エタノール量に換算し一日30ml以下。(ビール720ml、ワイン300ml、100プルーフウィスキー60mlに相当)
    女性及び軽量の男性ではエタノール1日15ml以下とする。
  3. 30〜40分の好気性運動を毎日行なう。
  4. ナトリウム摂取量を一日100mmolを越えないようにする。(ナトリウム2.4g、食塩6g以下)
  5. カリウムを食物で一日90mmol以上摂る事を維持する。
  6. 食事により毎日カルシウム、マグネシウムの摂取を維持する。
  7. 心臓血管系の疾患全般の予防のため喫煙を止め、食事による飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を減らす事。

 これらのライフスタイルの修正は我々も毎日外来で患者さん、或いは患者さん予備軍の方々にお話ししているのですが、個人での実行はなかなか難しいようです。これらの事を実行し、継続するには、ヘルスケアの専門家のいるジムや地域の健康施設を活用し、実行者への教育、援助、フォロウアップを組織されたチームで行なう事が必要と思われます。

 まず1番目の減量ですが、BMI(Body Mass Index)が27以上の体重オーバーは、血圧の上昇と高い相関を示します。上半身への脂肪沈着が著しいリンゴ型肥満(内臓肥満)はウエストが男性では98cm、女性では85cm以上が要注意で、高血圧、高脂血症、糖尿病のリスクが高くなり、心筋梗塞による死亡率も増加するといわれています。一方、高血圧で肥満の人は4.5kgの減量で血圧が下がるといわれています。大変難しい事ですが、食事のカロリーを制限し、積極的に運動を行ない、減量を心掛ける事が重要です。

 2番目の節酒ですが、アルコールの過剰摂取は高血圧の重要な危険因子であり、降圧療法の妨げとなり、脳卒中の重大な原因の一つと言われています。しかしながら、飲酒は全くゼロにする必要はなく、先に述べた適量のアルコールを越えなければ血圧を上げる事はなく、虚血性心疾患のリスクをむしろ減らすという、飲ん兵には有り難い報告もあります。古来から言われているように酒は薬にも毒にもなるわけで、適量の酒量を守る事が重要です。

 3番目の運動に関しては、チャックさんをはじめスタッフの皆さんが、既に効用を十分述べられています。積極的に運動をする人と座りっぱなしの人の比較で、後者は20〜50%高血圧になる危険が増えると言われています。血圧は中等度の運動(最大酸素摂取量の40〜60%の運動)、実際には毎日45分の活発なウォーキングを続けると血圧が低下する事が、多くの報告から明らかになっています。この強度の有酸素運動では殆ど危険はありませんが、心臓に問題のある人、高度の糖尿病を有する人では、運動のプログラムを立てる前に負荷心電図をとり専門家に受診した上で運動を始める事が必要です。

 4番目の減塩に関して、一日平均12グラムの食塩を摂取している我々日本人にとって、一日6グラム以下の減塩はつらいものがあります。しかしながら大規模な疫学調査により血圧に対する減塩の効果は明らかです。最近では手軽な加工食品が多く出回っていますが、米国では75%の食塩摂取は加工食品からもたらされるという事で、食品のラベルの塩分量をよく見て購入する事を勧めています。

 5番目のカリウム摂取に関しては、高カリウム食は高血圧を予防し、高血圧患者の血圧調節を改善すると言われ、逆に不充分なカリウム摂取で血圧が上昇すると言われています。そこで新鮮な野菜や果物から一日50〜90mmolのカリウムを摂取する事が推奨されています。

 6番目のカルシウムとマグネシウムの摂取に関しては、多くの疫学調査により、少ないカルシウムとマグネシウムの摂取により高血圧がもたらされたとされています。一方これらを多く取った場合の降圧効果に関しては未だ明確なデータはありませんが、これらのイオンの摂取を維持する事は、一般的な健康保持の上から重要である事は異論のないところです。

 7番目の喫煙に関しては、高血圧との関連が明らかです。禁煙により総ての年令層において1年以内に心臓血管系に於いて好影響が認められています。

 さて、今回のJNC-VIでは望ましい食事療法として"DASH diet"と言うものを推奨しています。これは米国のNational Heart, Lung and Blood Institute(NHLBI)等によるDietary Approaches to Stop Hypertension(DASH)研究の報告に基づいています。この食事は豊富な果物と野菜、低脂肪の乳製品、低脂肪低飽和脂肪酸、低コレステロール、および繊維、カリウム、カルシウム、マグネシウムが豊富でやや多い蛋白質が含まれています。この食事を8週間の間摂らせ、この間、運動、減量等の食事療法以外の事は一切行なわず、顕著な血圧の低下が認められています。

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