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 第23回 「肩こり」

 先日クリニックのレントゲンのA技師が「今日の患者さんはちょっと変です」と言って、造影剤で腎臓、尿管、膀胱を写し出す腎盂撮影というレントゲン写真を持って来ました。

 皆さんご存知の様に、我々の体内には左右一対ずつ2個の腎臓、尿管がありますが、この患者さんには何と左右2個ずつ計4個の腎臓と尿管があったのです。この重複腎と診断された患者さんは、今のところ時々微量の血尿が出る程度で臨床的に全く問題ありません。「私は一体どうしたらよいでしょう?」との患者さんの質問に、最近話題の○○ローンの保証人になってもらい「おっさん、金払えへんのやったら目ンタマや腎臓の一つでも売ったらんかい!」と凄まれた場合、ボランティアでどうですか?と医師にあるまじき冗談が喉元まで出かかったのを飲み込みました。危うく怖い看護婦さんに肩をこづかれるところでした。

 という訳で?今回の話題は肩こりです。

 肩こりは首から肩甲骨にかけての筋肉のこわ張り、緊張、疲労感が混ざった一種の不快感と説明されています。人は二本足で歩行しますが、首が約3kgの頭を支え、首から肩甲骨を含む肩の骨と筋肉が体重の8%と言われる腕を支えています。コンピュータや机の前で前かがみになり長時間作業をしていると、僧帽筋、項部筋、斜角筋等の首を支え、腕をつり下げている筋肉が疲労状態になり収縮してしまいます。チラノザウルスぐらいの立派な首が有り、身体の割りに小さな腕ですと、身体の5分の1ぐらい大きな頭を乗せていても平気かも知れません。ほ乳類でもゴリラやチャックさんぐらい首肩の筋肉が発達していると良いのですが、時々見かける折れそうな細い首の人や樋口一葉の様な、なで肩の人(お会いした事はありませんが)では、首の回りの筋肉の発達も悪く、頭や腕の重量の負担も倍増します。

 筋肉が収縮しますと中を走る血管が圧迫されて、筋肉に酸素を運ぶ血流が減り、筋肉は酸欠状態になってしまいます。この状態が持続すると筋肉の疲労や痛みを起こす乳酸やブラジキニンといった化学物質が現れて、神経を刺激し、筋肉の痛みやだるさを自覚させます。筋肉を大きく動かす動作、運動を行うと血流が改善し、これらの物質が筋肉から出ていってしまいますが、動きが少ない静的な作業を持続すると、この物質が更に筋肉を収縮させて血流の流れを妨げ、悪循環に陥ってしまいます。これが筋肉の発育不良、筋肉疲労による肩こりのメカニズムと言われています。

 よく風呂に入ると肩こりがとれるという人がいますが、温度により筋肉の血流が良くなるためです。夏場のクーラーや冬場の薄着で肩を冷やすと、血管が縮み血流が悪くなり逆に肩こりが増悪してしまいます。肩こりの原因にはその他柔らかすぎた枕を用いたり、不自然な姿勢で寝た起床時に首が痛くて回らなくなる、いわゆる寝ちがえ(急性頚部痛)があります。これは頚椎関節や首の筋肉の過伸展によって起こる炎症と考えられています。

 その他、頚椎の病気として椎間板の中心にある髄核が何らかの原因で飛び出し、神経を刺激する頚部椎間板ヘルニア、年令的変化で頚椎に棘の様なものが出現し、頚椎が変形する頚椎症、頚椎を後ろから支えている後縦靭帯にカルシウムが沈着して起こる、後縦靭帯骨化症等、色々な骨格に関する疾患があります。

 また、内臓疾患が原因で肩こりが起こる場合もあります。肩こりで一週間ばかり他の整形外科で電気治療を受けていたところ、次第に胸も苦しくなり当院に来院され、心電図で切迫心筋梗塞の診断で急遽専門病院に転送し、バイパス手術で事なきを得た人や、数か月前からの肩こりでマッサージを受けていたがよくならず来院され、レントゲン写真で進行した肺がんで手遅れだった人を私も経験しています。

 その他、心療内科、精神科の立場から各種ストレスや精神的要因が肩こりを増悪させると言われており、心身症、うつ病、自律神経失調症等の疾患が肩こりの背景にある場合もある様です。

 という事でそろそろ私も肩がこって来ました。次回は肩こりの治療を中心に述べたいと思います。

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