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 第80回 「アイアンマン・チェジュ大会」  
 韓国でアイアンマンの大会が開催されるようになって、今年で5年目になります。00年に第1回大会がチェジュ島の中文リゾートで開催され、01年の第2回大会も同じ場所で開催されました。02年はW杯を開催した事がある本土で北朝鮮に近い束草で開催されましたが、ソウル空港から束草まで移動するのに5〜6時間もかかって不便だった為に、国外から参加した選手に不評で、03年にまたチェジュ島の中文リゾートに会場を戻し、今年で通算4回目の開催となりました。

 
そもそも韓国でのアイアンマン・ディスタンスレースの歴史は、91年から小規模ながら競技を開催していましたが、ハワイの出場権は付いていませんでした。98年の大会から何とか韓国の選手をハワイに出場させたいとの主催者の希望で、WTCより5名だけハワイの出場権利をもらい開催しました。基本的に、韓国の選手をハワイに出場させるという意向が主催者側にあったので、韓国人以外は、男女共に総合優勝した場合のみハワイのスロットを与えるという条件が付いていました。

 大会は現在行われている中文リゾートとは場所が違い、もっと島の西よりの城山と言う漁港で開催されました。当時、韓国の選手でアイアンマン・ディスタンスレースに出場できる能力を持った選手は、約100名前後しかおりませんでした。98年の大会には、韓国選手が96名、外国人選手が12名、その内日本人選手が9名で合計108人でのレースでした(完走93名)。同大会では濱野隆弘選手が9時間13分のタイムで総合優勝し、ハワイの出場権を獲得しました。2位には松田薫選手、3位は今回総合で4位だった韓国のリョー選手で、4位は平田文哉選手でした。

 コースも現在ではおよそ考えられない様な設定で、スイムは漁港の岸壁から沖に向かって約750m泳いでスタート地点に戻り5周回、波が高く3〜4mぐらいあり沖に向かう時は大変でしたが、折り返してからはサーフィンをしている様な感じでした。バイクは漁港の村から5〜6km走り、ほぼ直線路のコースを12周回、ランはバイクコースの一部を使い、3周回してからスタートした漁港の村に戻るというコースとなっていました。

 ランの後半より、今回と同じ様に台風の影響により雨風が強くなり、一部のコースでは膝上まで冠水した場所も通過しなければならず、道路には街灯もなく大雨の中、ただひたすらゴールを目指し走るのみ、ゴールでの観客や応援はゼロで、数名の関係者がいるだけという大変なレースでした。99年も濱野選手は出場しましたが、スイム5周回を終わって岸壁に上がったら、周回不足だと言われ係員と押し問答になりました。諦めてもう1回泳ぎ6周回してからバイクをスタートしましたが、98年に続き総合優勝しハワイの出場権を得ました。

 6〜7年前の大会とは言え、現在ではちょっと考えられない様な競技運営でした。00年より本格的なアイアンマン予選レースとして開催され、5年が経過しましたが、まだまだローカル色が強い大会です。年々改善されアスリートの底辺も増加し、第1回大会では日本人選手が大半でしたが、今年は韓国選手が7割以上占めるまでになりました。また、エリート選手の活躍も男子に関しては目を見張るものがあり、第1回大会では韓国の選手で一番早かったのは総合で14位に入ったリョー選手でしたが、昨年は総合3位にパク選手が入り、田村選手を負かしました。

 さて、今年のエントリー総数は1,061名、その内韓国選手が688名、日本人選手が283名でした。今年のエリート選手の目玉は女子では42才になったポーラ・ニュービー・フレーザー選手、男子では38才のクリスチャン・ブストス選手、両選手共に大ベテランで老獪のある選手ですが、この二人に対しどんな選手が優勝争いに絡むのかが注目されるところでした。

 大会前日より台風16号が日本、中国大陸、韓国等に接近する恐れがあるのと、台風が接近しなくても台風の影響による波浪の高さが心配されました。レース当日、朝6時30分にスイム中止が決定され、デュアスロン形式の大会に変更され、レースナンバー1番より5秒間隔でバイクスタートとなりました。アイアンマンでは97年最後のびわ湖大会がやはり台風の影響によりスイムが中止となり、デュアスロン大会となりましたが、アジア地区でのアイアンマン大会としては2回目のスイム中止という事になりました。

 海は荒れていても天気は晴れて気温は高く30度はあり、台風の影響による風も強く、スイムが中止になってもレース条件は厳しいものとなりました。バイクコースは、昨年100kmからのハードな登り坂が不評だったので、少しショートカットして90kmから登りに入るコースに変更となりましたが、登りは22箇所で最高点は約600m近くあります。140km位で平坦となりますが、そこからゴールまで強い向かい風となり、エージクラスの選手は非常に苦労した様でした。ランの2周回も折り返しから遅い選手ほど強風となり、厳しいレースとなりました。

 レース結果としては、男子エリートでは伏兵でニューカレドニアのパトリック・ベルナー選手が、ランスプリットを2時間55分で走り7時間42分33秒のタイムで初優勝。2位には、20分の差を付けられましたが、ベテランのクリスチャン・ブストス選手。3位は昨年も3位だったパク選手。女子エリートでは下馬評通り年齢など物ともせず、2位以下に17分の差を付け、ポーラ・ニュービー・フレーザー選手が8時間54分02秒のタイムで優勝しました。田村選手も昨年勝てなかったので期待されていましたが、バイクでアクシデントに見舞われ、残念ながら5位という成績に終わってしまい、ハワイの出場権も逃がしてしまいました。昨年3位で田村選手の上に入ったパク選手は、今年も3位という成績で年々実力をつけて来ており、今後アジアにおいては侮れない選手となりそうです。今年はフロリダにもチャレンジするそうで、アメリカでどのくらいの成績を残すのかも注目されるところです。

 地元開催で韓国選手の出場が年々増加し、日本人選手を逆転しています。韓国選手のレベルは日本の80年代後半に良く似ていますが、今アジアでは韓国と中国のパワーが目立ちます。トライアスロンに関しても、韓国も中国も日本に追いつき追い越せという意気込みが見られます。特に中国はアイアンマンに関しては未だ未知数ですが、北京オリンピックを控えていますので急速に強化して来る事が予想されます。なにせ13億もの人口があるのです。適性者をふるいに掛け、徹底した強化をして来るでしょうから、日本もうかうかしていられません。

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