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 第1回 「筋肉の痛み」

 スポーツやトレーニングを習慣的に行なっている人達は、科学的なトレーニング理論もよく勉強しています。経験から来るカンも非科学的だと言って無視することは出来ません。しかし人間の身体についての研究はまだまだ始まったばかりで、比較的遅れている分野でもあります。個人差も大きい上、実際の変化を実際に解剖して見ることは出来ません。そこで、筋肉の発達などについてはあらゆる仮説に基づいた研究や測定と共に、様々な試験を行なって予測を立てているのです。

 ここでは、僕が主にアメリカから取り寄せているトレーニング科学やメディカルサイエンスの情報をベースに、できるだけ分かりやすく説明します。経験やカンを頼るのも悪くはないが、ときどき、「筋肉痛がでないトレーニングは効果がない」とか「筋肉を発達させるには絶対ネガティブトレーニングだ」などという声を聞くことがあります。こういった不確かな意見に振り回されないためにも、正しい知識を身に付ける必要があると思います。

 第1回のテーマは筋肉痛についてです。習慣的なスポーツやトレーニングだけでなく、普段の生活の中でも引越やレジャーの後、ひどい筋肉痛を起こした経験のある方は少なくないと思います。参考にしてみてください。

 我々の筋肉はその働きの中で、自らが持っている力を越える強度(負荷)がかかると(=限界を越える)痛みがでます。これは、今まで経験のない動きや運動を行なった場合や、経験はあっても久しぶりの場合でも起こります。個人差はあるけれども筋肉の痛みは運動の数時間後から出始め、凡そ48時間後にピークを迎えます。但し、運動直後に痛みがでたときは、肉離れや筋の断裂などの怪我なので、ここで説明する筋肉痛とは異なります。

 筋肉痛に関しては昔から運動生理学者や科学者がその原因を研究してきました。痛みの原因として主に考えられてきたのが、

  1. 筋線維の中の小さな細胞組織が破れている
  2. 筋繊維の中のアクチンフィラメントとマイオシンフィラメントが擦れあってささくれだっている
  3. 筋肉が酸素不足になって痛みを感じる細胞が発生し、筋肉の痙攣がおこる
  4. 筋肉細胞の中の水分が増えて痛みのリセプターを刺激する
  5. ハイドロキシプロニーがたまって関節の回りの組織を刺激する
  6. 乳酸がたまる

で、正解はどれか?

 長年多くの研修者達による研究と測定の結果、筋肉細胞は痛んでいないとか、乳酸がたまっていても痛みがないことやその逆もあることなどの理由によって、2つの理論が残りました。

  1. 筋肉の痙攣・・・運動の後でストレッチをするとかなり痛みの発生が軽減できる為。
  2. ハイドロキシプロニーの増加による関節付近の痛み・・・運動48時間後にハイドロキシプロニーがかなり増えている。この物質はコラーゲンが不充分な状態だとかなり増える。コラーゲンは関節の中にある蛋白質で、ひどい痛みは関節付近において発生する。

では、どうやったら痛みの発生を防げるのか?

 まず第一はいきなり重いものを挙げないこと。筋肉に対して靭帯と腱の血液循環はあまりよくない為だ。また、エキセントリックトレーニングを行なうときには、特に注意が必要だ。エキセントリックな動きはコンセントリックに比べて1.5倍くらいの負担が筋繊維にかかることになり、それだけ筋肉痛を起こす可能性も高まるからだ。そして、トレーニング後には十分なストレッチを行なう。場合によっては氷で冷やす。さらに休養と栄養(コラーゲンにはビタミンCやEが必要)を十分に取る。

 最近はネガティブ(エキセントリック)トレーニングがはやっているようだ。もちろんその特典はあるが、行なう時の注意点をもう一度整理しておこう。

  1. ネガティブトレーニングを始めるのはある程度筋力がついてから
  2. 徐々に負荷を増やす(ウォームアップの為のセットを行なう)
  3. トレーニング前後に使う筋肉をストレッチする(スタティックストレッチ)
  4. トレーニング後は関節の回りを冷やしておく
  5. トレーニング後に痛みがでれば、温湿布などで温める
  6. 痛みがでたときはトレーニングを休まずに軽い負荷で高回数行ない、ストレッチも行なう

 普段の生活の中で慣れない力仕事やスポーツを行なうときにも、同様の注意点が当てはまるので参考にしてください。

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